愛を教えて ―背徳の秘書―
(5)社長室の秘密
藤原グループ本社ビルの前にベンツのリムジンが停車する。
運転手が降りてきて、足早に後部座席のドアを開けた。ドアの下方から覗くのは、ローヒールのパンプスからスラリと伸びたくるぶしとふくらはぎ……。
「到着いたしました。お疲れ様でございます」
運転手は深々と頭を下げる。
「ありがとう。ご苦労様でした」
にっこり微笑むのは社長夫人、藤原万里子。
万里子はゆったりとしたワンピースを着ていた。
妊娠四ヶ月では、まだまだ体型が変わるほどではない。それでもウエストを締める服はよくない、と夫である卓巳の指示である。
「ごめんなさいね。卓巳さんたら、心配性で」
そして、万里子のあとから車を降りて来たのが、宗の恋人、和田雪音だった。
今から一時間前、忘れ物を秘書の朝美に取りに行かせると卓巳から連絡が入る。だが雪音が見る限り、万里子は彼女が苦手そうだ。
万里子が人の悪口を言うことはまずない。その分、胸の中に溜め込むタイプだ。そして今は妊娠初期の大事な時期。加えて、悪阻も辛そうで……。
『いっそ万里子様がお届けになっては?』
そんなふうに、雪音が提案したのだ。
運転手が降りてきて、足早に後部座席のドアを開けた。ドアの下方から覗くのは、ローヒールのパンプスからスラリと伸びたくるぶしとふくらはぎ……。
「到着いたしました。お疲れ様でございます」
運転手は深々と頭を下げる。
「ありがとう。ご苦労様でした」
にっこり微笑むのは社長夫人、藤原万里子。
万里子はゆったりとしたワンピースを着ていた。
妊娠四ヶ月では、まだまだ体型が変わるほどではない。それでもウエストを締める服はよくない、と夫である卓巳の指示である。
「ごめんなさいね。卓巳さんたら、心配性で」
そして、万里子のあとから車を降りて来たのが、宗の恋人、和田雪音だった。
今から一時間前、忘れ物を秘書の朝美に取りに行かせると卓巳から連絡が入る。だが雪音が見る限り、万里子は彼女が苦手そうだ。
万里子が人の悪口を言うことはまずない。その分、胸の中に溜め込むタイプだ。そして今は妊娠初期の大事な時期。加えて、悪阻も辛そうで……。
『いっそ万里子様がお届けになっては?』
そんなふうに、雪音が提案したのだ。