愛を教えて ―背徳の秘書―
「お前がこんな男だとは思わなかったぞ。万里子が知ったら……」

「ちょっと待ってください、社長! 私は」

「濡れ衣だと言い切れるか? 勝てる自信はあるのか?」

「それは……。いや、でも」


万里子と雪音は顔を見合わせた。

どうして仕事の話に万里子の名前が挙がるのだろう……。


「誰だっ!?」


鋭い卓巳の声と同時に、扉が内側に開いた。


「ゆ、きね……さん」


わざとらしく“さん”を付けたのはドアノブを握った宗だった。



「万里子……随分と早かったんだね」

「早過ぎて卓巳さんを困らせてしまいました?」

「いや……。その、迷わないように、秘書室の女子社員を迎えにやったんだが。……おかしいな」

「受付の方が気を利かして案内してくれたんです。きっとすれ違ったのね」


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