愛を教えて ―背徳の秘書―
「私は契約社員ですので、比較的自由が利きますから」
香織は眼鏡越しに、実直そうな笑顔を作り宗に向かって微笑む。
それにカチンときたのが朝美だ。
「志賀さん、勝手に決めてもらっては困るわね。秘書室の責任者は私なのですから。宗さんのおっしゃるとおり、新人の広瀬さんに行ってもらいましょう」
言葉にはしないが、契約社員の分際で、という口調がありありだ。しかも、宗を挟んで負けたくないという思いが見え隠れする。
だが、それは香織も同じであった。
「お言葉ですが……広瀬さんは専務秘書の仕事を覚えるために、午後から大阪に同行されるはずでは?」
言い方はソフトだが目は冷たい。いや寧ろ、香織の瞳には嘲笑に近い色が浮かんでいた。
一瞬、朝美の頬が引き攣る。
だが、すぐにアルカイックスマイルを取り戻し、手帳を繰り始めた。
「あら、そうだったかしら? では、橋本さんにお願いしましょう。どちらにしても、あなたが口を出すことではないのよ。志賀さん」
香織は眼鏡越しに、実直そうな笑顔を作り宗に向かって微笑む。
それにカチンときたのが朝美だ。
「志賀さん、勝手に決めてもらっては困るわね。秘書室の責任者は私なのですから。宗さんのおっしゃるとおり、新人の広瀬さんに行ってもらいましょう」
言葉にはしないが、契約社員の分際で、という口調がありありだ。しかも、宗を挟んで負けたくないという思いが見え隠れする。
だが、それは香織も同じであった。
「お言葉ですが……広瀬さんは専務秘書の仕事を覚えるために、午後から大阪に同行されるはずでは?」
言い方はソフトだが目は冷たい。いや寧ろ、香織の瞳には嘲笑に近い色が浮かんでいた。
一瞬、朝美の頬が引き攣る。
だが、すぐにアルカイックスマイルを取り戻し、手帳を繰り始めた。
「あら、そうだったかしら? では、橋本さんにお願いしましょう。どちらにしても、あなたが口を出すことではないのよ。志賀さん」