愛を教えて ―背徳の秘書―
(8)甘い毒
「まったく、呆れた奴だ。遅くなったうえ、ケーキも買わずにどこまで行っていたことやら」
ため息混じりに卓巳はつぶやいた。
(……三度目だ)
宗は卓巳のため息を数えながら、黙って小言を聞く。反論などできるはずもなかった。
「万里子は雪音くんと仲がよいから文句は言わんが……。中澤くんとのことはどうなってるんだ?」
「解決に向けて……鋭意努力しております」
そのまま、深く頭を下げる宗であった。
万里子が本社を訪れたのが昨日のこと。
宗は雪音を部屋に連れ込み、時間ぎりぎりまで楽しんだ。結果、ふたりがケーキ屋に駆け込んだのは、昼の三時を回ってしまい……。
行列ができるほど人気のケーキ屋である。すでに、テイクアウト可能なケーキはすべて売り切れたあとだった。
まさか、宗のマンションに寄り道して……色々していました、とは言えない。『道が混んでいて、並んだのですが』そんな見え透いた言い訳を、笑って許してくれたのは万里子だけだった。
だが、そのことより、当面の問題は中澤朝美だ。
彼は朝美の真意を確かめるため、退社直前の彼女を呼び止めた。
ため息混じりに卓巳はつぶやいた。
(……三度目だ)
宗は卓巳のため息を数えながら、黙って小言を聞く。反論などできるはずもなかった。
「万里子は雪音くんと仲がよいから文句は言わんが……。中澤くんとのことはどうなってるんだ?」
「解決に向けて……鋭意努力しております」
そのまま、深く頭を下げる宗であった。
万里子が本社を訪れたのが昨日のこと。
宗は雪音を部屋に連れ込み、時間ぎりぎりまで楽しんだ。結果、ふたりがケーキ屋に駆け込んだのは、昼の三時を回ってしまい……。
行列ができるほど人気のケーキ屋である。すでに、テイクアウト可能なケーキはすべて売り切れたあとだった。
まさか、宗のマンションに寄り道して……色々していました、とは言えない。『道が混んでいて、並んだのですが』そんな見え透いた言い訳を、笑って許してくれたのは万里子だけだった。
だが、そのことより、当面の問題は中澤朝美だ。
彼は朝美の真意を確かめるため、退社直前の彼女を呼び止めた。