愛を教えて ―背徳の秘書―
(9)ご利用は計画的に
「ユキ! ねぇ嘘でしょ? 嘘って言って」
三日連続の深夜残業だった。
ようやくゴールデンウィークまでに仕事を済ませる目処がつき、ホッとして最上階のエレベーターホールに立ったときのこと。ふいに背後から声をかけられた。
志賀香織である。
いつものお堅い表情を崩して、まるで情事のあとのように切羽つまった顔で宗に詰め寄った。
「志賀くん。いったいなんの真似かな? こんな遅くまで、君が残っている用事はないはずだよ。勤務終了後は速やかに退社しなさい」
宗は極めて他人行儀に返した。
「どうして? どうして中澤さんなの? あの人の実家は普通のサラリーマン家庭でしょう? 私とそう変わらないはずよ!」
どうやら早速、朝美は行動に出たらしい。
その素早さに思わず感心する。
「俺のような男が結婚を決める理由なんて、ひとつしかないと思うんだけどね……」
宗は思わせぶりな言葉を、しれっと口にした。
三日連続の深夜残業だった。
ようやくゴールデンウィークまでに仕事を済ませる目処がつき、ホッとして最上階のエレベーターホールに立ったときのこと。ふいに背後から声をかけられた。
志賀香織である。
いつものお堅い表情を崩して、まるで情事のあとのように切羽つまった顔で宗に詰め寄った。
「志賀くん。いったいなんの真似かな? こんな遅くまで、君が残っている用事はないはずだよ。勤務終了後は速やかに退社しなさい」
宗は極めて他人行儀に返した。
「どうして? どうして中澤さんなの? あの人の実家は普通のサラリーマン家庭でしょう? 私とそう変わらないはずよ!」
どうやら早速、朝美は行動に出たらしい。
その素早さに思わず感心する。
「俺のような男が結婚を決める理由なんて、ひとつしかないと思うんだけどね……」
宗は思わせぶりな言葉を、しれっと口にした。