愛を教えて ―背徳の秘書―
宗は手元にある道後温泉のパンフレットに視線を落とす。
海外に行こうとしたが、雪音は一度も海外に出たことはなく、パスポートもないという。
それなら、と考えたのが宗の実家近くの温泉だった。
それまでにプロポーズの了解をもらえたら、そのまま両親にも会わせることも可能だ。
そのためには朝美の話に乗り、上手くやり過ごすしかない。
三日前の夜、朝美が提案した内容とは……。
「誰が流した噂かしらね。でも、ちょうどいいじゃない。彼女に結婚すると思わせたらどうかしら?」
最初は何を言い出すつもりか、見当もつかなかった。
宗は二杯目のソフトドリンクに口を付けながら答える。
「それで? 最終的には君と結婚式を挙げればいいのかな? 君がどう思っているのかは知らないが……志賀くんとは、彼女の結婚前に少し付き合ったくらいだ。もちろん、不倫などはしていないし、離婚後の彼女の思惑は知らない。じゃ……残業に戻るよ」
椅子から立ち上がり、ブリーフケースを手にボックス席から離れようとしたときだった。
「私と結婚するって知ったら、会社を辞めるかもしれないわね。妊娠を社長に知られて仕方なく、なんて理由なら、あなたのことも恨まないかも……そうは思わなくて?」
ニッコリと微笑みながら、朝美も二杯目のカクテルを口に運んだ。
海外に行こうとしたが、雪音は一度も海外に出たことはなく、パスポートもないという。
それなら、と考えたのが宗の実家近くの温泉だった。
それまでにプロポーズの了解をもらえたら、そのまま両親にも会わせることも可能だ。
そのためには朝美の話に乗り、上手くやり過ごすしかない。
三日前の夜、朝美が提案した内容とは……。
「誰が流した噂かしらね。でも、ちょうどいいじゃない。彼女に結婚すると思わせたらどうかしら?」
最初は何を言い出すつもりか、見当もつかなかった。
宗は二杯目のソフトドリンクに口を付けながら答える。
「それで? 最終的には君と結婚式を挙げればいいのかな? 君がどう思っているのかは知らないが……志賀くんとは、彼女の結婚前に少し付き合ったくらいだ。もちろん、不倫などはしていないし、離婚後の彼女の思惑は知らない。じゃ……残業に戻るよ」
椅子から立ち上がり、ブリーフケースを手にボックス席から離れようとしたときだった。
「私と結婚するって知ったら、会社を辞めるかもしれないわね。妊娠を社長に知られて仕方なく、なんて理由なら、あなたのことも恨まないかも……そうは思わなくて?」
ニッコリと微笑みながら、朝美も二杯目のカクテルを口に運んだ。