愛を教えて ―背徳の秘書―
いよいよ田舎に帰ろうか、というとき、司法修習中に知り合い意気投合した卓巳が宗を拾ってくれた。

だがそのときは、卓巳がこんな大会社の御曹子で、自分がその秘書になるとは予想もしていなかった。 


香織と出会ったのはちょうどそのころだ。

当時、香織の勤めていた企業は藤原の先代社長を信奉し、新社長をはじめあらゆる変化を嫌がっていた。

内情を知るため、宗は重役秘書で唯一の二十代だった香織に近づく。もちろん、結婚を餌に騙すような真似はしていない。だが、胸を張って言えるような手段でもないだろう。


その後、正直に言えば、別れるタイミングを逃したまま二年も関係を続けた。

いよいよ香織のほうから愛想を尽かし、『私、結婚するから別れて』と言われたときは、心底ホッとしたことを覚えている。



「志賀くん、俺がどんな男かよく知ってるだろう? 三年前と変わりない、君と結婚する気はないよ」

「そう言いながら、セックスだけはするのね」

「まあね。君の身体で迫られたら……コイツが勃てば、頭の中で違う女を思い浮かべながらでもイケるのが男ってもんだ」


それにはさすがの香織も顔色が変わった。


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