愛を教えて ―背徳の秘書―
(11)愛と欲望の間
ざわざわと秘書室から声が聞こえる。

宗は女性ばかりのその部屋に足を踏み入れた。


「やだ……怖いですね」

「男の人でした? それとも女性?」


重役秘書たちが朝美を取り囲み、口々に言っている。


「おはよう。何かあったのかな?」


後ろから声をかけた宗に、全員慌てた様子で振り向き、朝の挨拶をした。

もちろん朝美も同じように両手を前に揃えて頭を下げる。


「おはようございます。今朝は遅れてしまって……。まだ準備ができておりませんの。これから急いでやりますから」


何があっても仕事に手抜きなどしない朝美だ。

不思議に思った宗は彼女の右膝の白い包帯に気がついた。


「どうしたんだい? 転んだの?」

「ええ、まあ……」


言葉を濁す朝美の横で、他の秘書が代わって説明してくれた。


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