愛を教えて ―背徳の秘書―
(13)変われるか?
――カタン。

藤原邸をあとにしようとした宗の背後で物音がした。


「雪音?」


根拠はなかったが、そんな気がしたのだ。


しかし、そこに立っていたのは……万里子であった。

ゆったりしたニットのワンピースを着て、ショールを羽織っている。まだまだ妊婦を思わせる身体のラインではないが、動きは幾分ゆっくりだ。


「万里子様……あの」

「卓巳さんが怒ってらしたでしょう?」


そう言うといつもと変わらず微笑んだ。


雪音と仲のよい万里子なら、さぞや怒っているのだろう、と思っていた宗には肩すかしだ。


「私のことをお怒りではないんですか?」

「どうしてそう思うの? だって、すべて誤解なのでしょう? 卓巳さんにそうおっしゃっていたのが聞こえたわ」


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