愛を教えて ―背徳の秘書―
「宗、警察から連絡があったそうだな」

「……はい」


社長室に呼ばれ、卓巳は宗の顔を見るなり朝美のことを訊ねる。


通勤途中、階段から落ちることはあるだろう。

だが、昨日の今日で二日連続というのは、そうあることではない。『突き落とされたような気がする』という目撃者の声もあり、警察から問い合わせがあった。


「まさかとは思うが、この件にお前が絡んではいないだろうな」

「ご冗談を。ただの偶然だと思われます」

「…………志賀くんが休んでいるようだが。何か心当たりがあるんじゃないのか?」


卓巳は疑惑の色に塗られた声で、宗を詰問する。


香織からは今朝電話があったらしい。

秘書室の女性社員が受け、高熱と眩暈で休みます、とのこと。宗は朝美のこともあり、気になって自宅と携帯に電話を入れたが全く出ない。


まさかとは思うが、宗の件で香織が朝美を……。


もし週刊誌に嗅ぎつけられ、藤原グループの名前が出た場合、とんでもない醜聞になってしまうだろう。


< 77 / 169 >

この作品をシェア

pagetop