愛を教えて ―背徳の秘書―
朝美の話をしたとき、言い難そうに万里子が口にしたことを思い出す。
『中澤さんは、宗さんと以前お付き合いされてたんじゃないかしら? でも、今は違うと思うわ』
特に後半は、取って付けたような台詞だ。
例の写真に写った女性……どこかで見たような気はするが、それが朝美でないのは確かだった。
粒子は粗く、顔もはっきりと写ってはいない。だが、写真の女性の住まいは二階建てのコーポ。藤原家に控えてある朝美の住所から、彼女の住まいはオートロックのマンションだと、雪音は突き止めていた。
雪音は万里子が羨ましかった。
卓巳のように恥も外聞もなく、脇目も振らずに愛してくれたなら……。あれほどまでに愛されたら、唯一無二の愛情を捧げても惜しくはないだろう。
宗が与えてくれる“愛”は毒だ。
雪音の“愛”を殺し、心を腐らせてしまう毒。
それでも……『恥も外聞もなく、脇目も振らずに』宗に愛されたいと願う、自分がいた。
『中澤さんは、宗さんと以前お付き合いされてたんじゃないかしら? でも、今は違うと思うわ』
特に後半は、取って付けたような台詞だ。
例の写真に写った女性……どこかで見たような気はするが、それが朝美でないのは確かだった。
粒子は粗く、顔もはっきりと写ってはいない。だが、写真の女性の住まいは二階建てのコーポ。藤原家に控えてある朝美の住所から、彼女の住まいはオートロックのマンションだと、雪音は突き止めていた。
雪音は万里子が羨ましかった。
卓巳のように恥も外聞もなく、脇目も振らずに愛してくれたなら……。あれほどまでに愛されたら、唯一無二の愛情を捧げても惜しくはないだろう。
宗が与えてくれる“愛”は毒だ。
雪音の“愛”を殺し、心を腐らせてしまう毒。
それでも……『恥も外聞もなく、脇目も振らずに』宗に愛されたいと願う、自分がいた。