愛を教えて ―背徳の秘書―
「香織っ! 香織? 返事をしろ」


合鍵は香織に返してしまった。

宗はドアを叩いて、チャイムを鳴らすくらいしかできない。もちろん、携帯は移動中もずっとかけっ放しだ。

しかし、「電源が切れているか、電波の届かない場所に……」の繰り返しだった。


カチャッとドアが開き、宗が中に入った瞬間、香織が抱きついて来た。

一瞬、刺されるんじゃないか、と宗はドキッとする。


「来てくれてありがとう……嬉しい」

「香織。ふざけるのはやめてくれ。死ぬなんて言われたら、来ない訳にはいかないだろ?」


香織の顔を見て宗は驚いた。

送られてきた写真が余程ショックだったらしい。お世辞抜きで、二十代半ばから後半に見られる彼女が、今は宗より年上に思える。いつもは解れ毛ひとつない髪も乱れたまま、もちろんノーメイクだ。

そして、室内にはアルコールの匂いが充満していた。


「お前、飲んでるのか?」

「悪い? 昨日家に帰って、この手紙を見つけて……飲まずにいられないでしょ」


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