愛を教えて ―背徳の秘書―
宗に振り払われ、香織はリビングのテーブルに置かれたワインを手に取った。グラスに注がず、直接口を付けようとする。

慌てて近寄り、宗はボトルごと取り上げた。

ワインには、近くのコンビニの値札が貼ってある。ワンコインで買える国産のロゼワインだ。


「何するのよ! 返して!」


テーブルの下には発泡酒やチューハイの缶が転がっていた。どうやら買い置きが無くなって、コンビニに走り、適当に買い込んできたらしい。


「ずっと飲んでたのか?」

「だから何?」

「今朝……社に向かったんじゃないのか?」

「始業直後に、休みますって連絡を入れたわ。それとも何? 会社まで行って休暇届を出せって言うのっ」


噛み付くように怒鳴ってくる。

香織はしたたかに酔っていた。こんな状態で朝のラッシュ時に駅まで行き、朝美を突き落として逃げられるものだろうか?

むしろ足元がおぼつかず、彼女自身がコーポの階段から転げ落ちそうだ。


「香織、本当に家にいたんだな? 会社近くの駅で、中澤くんを階段から突き落としたのは君じゃないんだな?」


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