大嫌いだから、ね? ③
6
昼休みの校舎の中は、人気のないところを探す方が難しくて、私は結局、中等部との境にある温室に彼女を連れて行った。
中には入らずに、扉の前で立ち止まる。
温室の周囲も庭園になっていて、色とりどりの花やハーブが咲き乱れていた。
私たちのすぐそばではローズマリーが生い茂っていて、よい香りが自然と漂ってくる。
私の大好きな場所。
ここなら、彼女の用件がなんであれ、穏やかに話せるような気がしたんだ。
「えっと、ごめんなさい、こんなところまでつれてきて。
ゆっくり、邪魔が入らず、お話できるところって、他に思いつかなくて」
私は、周囲に目をやっている彼女にそっと声をかけた。
彼女は、はっとしたように私の方に顔を向けた。
綺麗な、少し冷たく感じるような綺麗な顔。でも、やっぱり、彼女に見覚えはない。
「いえ。ここなら、よけいな邪魔は入りそうにないし、ゆっくり話せそうで、いいかな」
「そう、よかった。で・・・私にどんな話があるんですか?」
なにを言われるのだろうと内心、ドキドキしながら、話を切り出した。
「私、あなたのことを知らないと思うんですけど・・・もし違ったら、ごめんなさい」
「ええ、しらない、かな? でも、私は知ってる」
言いながら、強い瞳が私をまっすぐ射抜く。