大嫌いだから、ね? ③
 
「熱はそんなにないみたいね。よかったわ。

 じゃあ、お粥でも作ってくるわね。それともなにか食べたいものがある?」

「ミルクぷりん」



 反射的に答えてた。小さな頃から大好物の、お母さんが作ってくれるミルクぷりん。

 具合の悪い時は、とくに食べたくなる。優しい味の、デザート。

 

「いいわよ。でも、それだけじゃ少ないから、お粥もつくるわ。

 でも・・・ゼラチンあったかしら? 牛乳たりないかも。

 陽菜が心配だから、買い物いってなくて・・・冷蔵庫にあるものでご飯つくってたのよ」

「待てるから、買い物に行って来たら、お母さん」

「ん・・・でも」

「私なら、平気だよ。大人しくしてるし、ベッドに戻っているから」

「わかったわ、約束よ」



 部屋を出ていこうとするお母さんに、声をかけた。



「あ・・でも、いくまえにハーブティいれてほしい」

「ええ、ちょっと待っていてね」



 うなずいて、音を立てないようにドアをしめて、お母さんは出て行った。

 階段を下りていく足音が、だんだんと遠くなっていく。


 
  

 


 

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