大嫌いだから、ね? ③
 
「う、うん。聞こえてる」



 光くんの声の向こうのざわめきと、学校の、昼休みの喧噪も。



 声がうわずってしまったのは、驚いたから?

 それとも、光くんと久しぶりに話しているから?



 自分の心に問いかけつつ、自分を落ち着かせるために小さく深呼吸した。



「陽菜、ごめんな」



 唐突に、光くんがいった。



「え? ごめんって?」

「風邪うつしちゃって。きつかっただろ?」

「ううん、違う。光くんのせいじゃないし、謝らないで」



 私はあわててそう言った。

 見えないと分かっていても、ぶんぶんと首を振る。



「私が勝手に風邪ひいちゃったの。

 だから、光くんのせいじゃないよ。

 やっぱり、家に帰ったら、手洗いとうがいしなきゃいけないよね。

 高校生になって、忘れてた」

「・・・手洗いとうがい・・・」



 小さくつぶやいた光くんは、次の瞬間、ぶはって噴き出して、携帯の向こうから、笑い声が思いっきり聞こえてきた。

 
 
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