大嫌いだから、ね? ③
二人の間に沈黙が下りてる。
携帯の向こう。
昼休みのざわめきと、それを断ち切るようにチャイムの音が聞こえてきた。
時間がたつのがはやい。
「陽菜? おい、寝てるの? 聞いてる? ・・・寝ちゃったのか?」
「う、ううん、寝てない。ずっと、ちゃんと、聞いて、たよ」
あわてていった言葉は、うわずってしまった。
「そっか、ならいい。
じゃないと、二度もいえないと思うから」
うそ、もう一度ちゃんと言ってほしい。
「私、ちゃんと」
もう一度、聞きたい。
「陽菜」
私の気持ちを言う前に、早口で光くんがつづけた。
「とにかく、がんばるよ。けど、それでも、陽菜があんまり可愛くて、意地悪しちゃうかもしれないけど・・・そのときは、ちゃんとおれにいってほしい」
「おい、海老原、なにしてんの!」
携帯の向こうから、誰かの声が聞こえた。これって、佐藤くん?
「つぎ、移動教室だけど? なんで、そんな教室のすみでこそこそと、なんか、変な人みたく、にやにやと携帯してるわけ? へんなサイトみてんの?
やだなぁ、昼間っから」
「だれが、変な人だよ! このあほ! へんな妄想すんな、佐藤」
「いやだな、妄想してたのは、海老原だろ?」
「誰がだ!」
むきになって、怒鳴り返す光くんの声がキィーンと耳に響いた。
・・・でも、光くんと佐藤くんの会話って・・・漫才みたい。