大嫌いだから、ね? ③
 
 おかしくて、くすって笑いがこぼれた。



「陽菜、ごめん。もう切らなきゃ」

「え、福田さんと話してるの! ええっ、おれも話したい! 福田さん、おれです、あなたの、佐藤要ですっ!」

「うるせ、佐藤」



 言葉とともに、べしって音が聞こえた。

 ・・・光くん、暴力はダメだよ。



「いてっ。デコ叩くなよ! 将来、はげたら責任とれよ!」

「知るか、勝手にはげてろ! と、とにかく、陽菜」

「う、うん」

「今日、行くから」

「へ!?」



 間抜けな私の声に構わずに、光くんはいった。



「家! 陽菜に会いたいから、絶対。行くから、待ってて。じゃ」

「じゃって、あっ・・・ちょっと、待って! 光くん!」



 慌てていう私の叫びは届かず、携帯は無情にも切れていた。



 行くから

 家



 光くんが言った言葉を頭の中で復唱する。



「行くから、家って・・・もしかして、うちに来るってこと!?

 うそっ、うそ」


 
 私はうろたえながら、立ち上がった。

 だって、だって、私、ずっと寝てたんだよ。

 風邪ひいてたんだから。

 だから、パジャマだし、部屋にうっすらとほこりかぶってるし・・・だって、寝てて掃除してないし・・・それにお風呂・・・ずっと寝てたから入ってないし---嫌だ。



 どうしよう。こんなじゃ、会えない。
 
  
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