大嫌いだから、ね? ③
「光くん、すぐに行くから。大丈夫だよ」
「え、ちょっと、陽菜!?」
言い捨てて、携帯を切った。
ためらいはなかった。むしろ、心配で気持ちが逸る。
机の上においてあった鍵と、携帯だけをもって、二階の部屋を飛び出す。
途中、リビングにおいてある薬箱から、風邪に効きそうな、総合感冒薬、咳止め、熱さまシートなどを取り出して、手提げにいれた。
玄関でスニーカーをはいていたら、ちょうど帰ってきたお母さんにばったり会った。
手には、マイバッグにいれた夕飯の材料。白ねぎがひょっこり顔をだしている。
「あら?」
慌てて、家を出て行く私をやんわりと呼び止める。
「どうしたの、陽菜? こんな時間に、そんなにいそいで?」
「うん。友達がね、風邪で具合が悪いのに、家にひとりなの。心配だから、様子を見に行ってきます」
「そう、それは心配だわ」
いいながら、マイバッグを私に差し出す。
ずしりと、重い。
「風邪の時は栄養とらないとね。それで何か作ってあげなさい。
陽菜ならできるでしょう? おうちの晩御飯は、家にあるもので作るから心配要らないわ」
「ありがとう、お母さん」
「いいのよ。でも、遅くならないように、特に、お父さんが帰る前には帰ってきて頂戴ね」
「はい、いってきます」
私は、すっかり荷物がいっぱいになったので、お母さんの自転車を借りて、光くんのマンションへと向かう。
雨がやんでいてよかった。
普段、自転車に乗りなれていないから、傘さして乗ったら、たぶん、ころんじゃうから・・・。