大嫌いだから、ね? ③
 エレベーターをおりると、正面にどんよりとくもった空がみえた。

 そこから目を下にむけると、雨が降ったせいですこしかすみがかった街並みが広がっていた。

 薄暗くなり始めた町には、明かりがともり始めている。

 もっと暗くなったら、夜景がとてもきれいなんだろう。

 私以外だれもいないフロアはしんとしていた。

 きょろきょろと、玄関扉を探す。

 エレベーターから左右に通路がわかれていて、そのさきにそれぞれドアがみえた。

 最上階は、どうやら二世帯しかないようだ。

 かなり、通路も広いし、他の階よりいくぶん、贅沢なつくりになっているようにおもえた。

 どっちだろう?

 一つは、表札に名前がでていなくて、左側の扉には書かれているようにみえた。

 私は、左の方へと進んだ。

 そばにちかづいてみると、そこには海老原と、表札がでていた。

 私は安堵の息をはいて、呼び鈴をおした。

 ・・・数秒待つ・・・。

 反応なし。

 思い切って、もう一度、おした。

 だけど、やっぱり、反応がなかった。



 光くん・・・ねむっちゃったのかな。でも・・・もしかして、部屋で倒れてなんていないよね?

 
 私は不安に駆られて、ドアの持ち手をつかんだ。




「!」



 予想してはいなかったが、持ち手が動いて、ドアが外側に開いた。



 カギかけてないの?

 不用心だよ、光くん。どろぼうがはいったらどうするの?




 そう思いつつ、開いたドアから室内へ目を走らせた。

 
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