大嫌いだから、ね? ③

 明かりがついていなくて、薄暗い室内はしんとしている。

 大理石なのかな? 玄関のつやつやと光沢のある床には、そろえられずころがったスニーカーがあった。

 サイズが大きくて、しかも、濡れている。雨に濡れたスニーカーは光くんのものにちがいなかった。

 私は、こくんと唾をのみこんで、そっと、室内へ足を踏み入れた。

 まっくらになるのを恐れて、外から光がはいるように、玄関の扉は開け放ったままにした。

 通路の明かりが照らす玄関で、声を出した。

 大声をだしたら、また光くんの頭に響くかもしれないと思いながら、名前を呼んだ。



「っ・・・光くん? いますか? 福田です」



 なるべく大きな声を出さないようにしたつもりだったけれど、静かな空間にやけに大きく、声が響いたような気がした。



 ・・・寝ているのかな。やっぱり・・・これ以上なかには勝手に入れないから・・・帰ろうかな。・・・帰ったら、メールしてみよう。



 そう思いかけていた時、ぱちんっと音がして、ぱっと周りが明るくなった。

 急に明るくなって、一瞬目がくらんで、私は瞬きをした。



「ひ、な?」



 驚きを含んだ、少しかすれた声が私の耳に届いた。
 
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