大嫌いだから、ね? ③
 明るさに慣れた目で、声のしたほうに目を向けると廊下の先に、光くんがいた。

 片手を壁にあてて、身体を支えるようにしてそこに立っていた。



「陽菜だ。・・・本当に、来たんだ」



 そう言って、うれしそうに光くんは笑った。

 

「う、うん。ごめんね。急におしかけちゃったりして。

 あがってもいい?」

「もちろん。スリッパそこにあるから、はいて」

「うん」



 私は、来客用に置かれていると思われる真新しいスリッパをはいた。

 ぱたぱたと音をさせつつ、光くんのもとに駆け寄る。

 光くんは同じ姿勢のまま動かないで、きつそうに下を向いていた。



「光くん、大丈夫」



 声をかけて、光くんの顔を覗き込む。

 額には乱れた前髪がはりついていて、顔が赤い。

 来ている服は部屋着なんだろうけど、シャツはボタンをとめるのもきつかったのかほとんどとめておらず、はだけていた。


  
 

 
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