大嫌いだから、ね? ③
 熱でうるんだ切れ長の目はいつもの鋭さがなくて、ぼーっとしている感じだ。


 
「あんまり・・・大丈夫じゃないかも。でも、陽菜の顔を見たから、すぐに治るよ」

「そんなわけないよ」

「そんなわけあるって」



 いって、壁から手をはなして、光くんはふらふら~っと歩き出した。

 危なっかしい足取りだ。



「ねぇ、大丈夫? 光くん」



 私はおろおろしながら後ろをついていく。

 光くんは扉をあけた。

 そこはかなりの広さのあるリビングだった。

 天井が高い。そして、部屋全体が新しいにおいがした。大型の薄型TVに、オーディオセットなどおかれているすべてが最新式のような気がする。

 すこし離れた場所にあるキッチンは今はやりのアイランドキッチンだ。

 外観はすこし年数のたったマンションなのに、光くんの家の中はとても新しい。

 リフォームしたばかりなのかな? ふと、そんなことを思った。



 光くんは迷わず、革張りの黒いソファに顔からばたんっと倒れこんだ。

 ソファのそばに脱ぎ捨てられている制服のジャケットがあった。

 
  




 
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