大嫌いだから、ね? ③
調理開始。
シンクで野菜を洗って、切る。
包丁はものすごく切れ味がよくて、ちょっと緊張した。すぱっと何でもよく切れそう。
お鍋と、フライパンを取り出す。ねぎとあげのお味噌汁、ぶりは照り焼きにして、大根はふろふき大根にする予定。ほかにも何品かつくろうかな。
ぶりを焼いていると、香ばしいにおいが、換気扇を回していても、部屋に漂ったのか、光くんがぴくりと動いた。
顔をあげて、私の方にむける。
「うわ。うまそうな、におい。おれ、鼻かぜじゃなくてよかった。
匂いがわからないと、おいしさを十分に感じられないしね。
けど、陽菜は本当に料理が得意だよな。この前のお弁当もすごかったし。
なんか目の前で料理しているの見れるなんて、感動する。
陽菜って、いいお嫁さんに間違いなくなるって感じだよな」
そんな台詞を思いっきり、計算のない、笑顔で言われたりしたものだから、私は思わず赤面してしまった。
包丁で、大根の皮をむいていたのを忘れて・・・
「きゃ! ・・・痛っ」
「陽菜!?」
指の先を、すぱっと切ってしまった。
手なんて、切ったことほとんどないのに。
じわっと、指先から血がにじむ。
少しずつ、ずきずきと疼くように痛みだした。