大嫌いだから、ね? ③
光くんは薬箱を抱えて戻ってきて、ダイニングテーブルの上に置いた。
薬箱を開くと、独特の薬品の匂いが漂った。ぎっしりといろいろな、薬が入っている。
光くんは消毒液と、コットンを手に取った。絆創膏の入った箱も取り出す。
「陽菜、傷みせて」
「・・・ん」
ためらいながらも、ずきずきと痛む傷口から手を離した。
手を離したら、血がぽたぽたと流れ落ちるんじゃないかと怖かったけど、そうはならなかった。
光くんが傷口に目を落とす。
そして、安堵のため息をついた。
「思ったほど、切ってなかったみたいだ。よかった。
これなら、傷跡も残らず、きれいに治るよ。ちょっとしみるけど、消毒する。
我慢して、陽菜」
「う・・・うん」
ぎゅっと目を閉じる。痛いのも、傷も血も、にがて。
ひやっとした感触。そして、痛み。・・・消毒ってしみて、痛いよ。
我慢できるほどだった痛みが、ひどくなった気がする。
でも、それはすぐに戻ったけれど。
光くんは手際よく消毒して、傷薬を塗ってくれている。
本当に、なれた手つきだ。
「光くん、上手だね」
「ああ。うち・・・、たまに母さんが指切ったりするんだよ。
料理の才能ないくせに、再チャレンジとかいって料理して・・・包丁振り回して、指をスパってきるんだよ。
このキッチンだって気合い入れて全部一から新品にして調理器具、調味料も一式そろえたくせに、初日に、ハンバーグ爆発させて・・・以降、使ってないんだよ」
ハンバーグ爆発!? するものなの、それって???