大嫌いだから、ね? ③
 
 光くんは薬箱を抱えて戻ってきて、ダイニングテーブルの上に置いた。

 薬箱を開くと、独特の薬品の匂いが漂った。ぎっしりといろいろな、薬が入っている。

 光くんは消毒液と、コットンを手に取った。絆創膏の入った箱も取り出す。



「陽菜、傷みせて」

「・・・ん」



 ためらいながらも、ずきずきと痛む傷口から手を離した。

 手を離したら、血がぽたぽたと流れ落ちるんじゃないかと怖かったけど、そうはならなかった。

 光くんが傷口に目を落とす。

 そして、安堵のため息をついた。



「思ったほど、切ってなかったみたいだ。よかった。

 これなら、傷跡も残らず、きれいに治るよ。ちょっとしみるけど、消毒する。

 我慢して、陽菜」

「う・・・うん」



 ぎゅっと目を閉じる。痛いのも、傷も血も、にがて。

 ひやっとした感触。そして、痛み。・・・消毒ってしみて、痛いよ。

 我慢できるほどだった痛みが、ひどくなった気がする。

 でも、それはすぐに戻ったけれど。

 光くんは手際よく消毒して、傷薬を塗ってくれている。

 本当に、なれた手つきだ。



「光くん、上手だね」

「ああ。うち・・・、たまに母さんが指切ったりするんだよ。

 料理の才能ないくせに、再チャレンジとかいって料理して・・・包丁振り回して、指をスパってきるんだよ。

 このキッチンだって気合い入れて全部一から新品にして調理器具、調味料も一式そろえたくせに、初日に、ハンバーグ爆発させて・・・以降、使ってないんだよ」



 ハンバーグ爆発!? するものなの、それって???

 
< 50 / 156 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop