大嫌いだから、ね? ③
「ん・・・」


 吐息のような声が漏れたけど、光くんは目をさまさない。

 間近でみる顔。

 閉じられた瞳、睫毛が長い。熱のせいか、唇は赤い。

 ・・・なんか、きれいかも・・・光くん。



「・・・」



 つい、じいっと見つめてしまう。

 しばらく見つめていたら、やがて、ぷはっと息を吐いて、ぱちりと光くんが目を開けた。

 あまりに近かったので、黒い目に、自分が映っているのがみえたほどだ。



「きゃ。びっくりした。ねていなかったの?」

「寝てたけど、呼ばれて、だんだんと目が覚めた。

 けど、陽菜が、あんまりじぃっと顔見てるから・・・なにかしてくれるのかなって待ってた」

「なにかって?」

「そりゃ、まぁ、キスとか?」

「しません!」



 きっぱりと言い切りつつも、ちらりと思う。

 光くんの唇・・・。この唇と何回か・・・キスしたことあるんだよね。

 そう思うと、頬が赤くなった。

 でも・・・自分からなんてできないし・・・。

 それに、私たち・・・付き合っているわけじゃない。



 今更ながら、そう思う。



 言葉がほしいな、そう思った。

 この頃、何度か、そう思ったことがある。

 


 



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