大嫌いだから、ね? ③
「ひとりでいるのには、慣れているけど・・・苦しい時、誰かがそばにいてくれるとそれだけで元気になれるみたいだ。

 ・・・陽菜がこうして、来てくれて、そばにいてくれて・・・熱なんて無いみたいに、苦しいのが消えたんだ」

「うん・・・病気の時、一人はさみしいよね」



 だから、私、ここにきたんだ。

 光くんが一人で苦しんでいるかと思うと、いてもたってもいられなくて。

 でも・・・、ずっと、ここにいるっていうのはさすがにできない。



「約束して家を出てきたから、ちゃんと守って帰らないといけないの」

「わかってる。でも・・・帰らないでほしい」



 熱のせいなのかな?

 感情のままに光くんは、言葉にしているような気がする。

 オブラードに包まれることのない言葉。熱があるからこそ、素直に出てくるわがままや、本音。

 いつもは行動が先に立つ光くんは、本当は、頭の中ではいろいろなことを考えているのかもしれない。

 ただ、ふだんは言葉にしないだけで。



「帰らないでほしい、陽菜。せめて・・・おれが食べ終わるまで。

 もう少しだけ」

「・・・うん」



 私は、これにはうなずいた。



「ありがと・・・陽菜」



 言って、光くんが私の肩に顔をうめた。

 予想外に柔らかい光くんの髪が頬をくすぐった。
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