大嫌いだから、ね? ③
「ね・・・いってもいい?」



 耳のそばで低い声でささやかれて、どくんと心臓がふるえて、私は身体を震わせた。



「な・・・なにを? えっと・・・そのまえに、ご飯食べないとひえちゃうよ。

 冷たいのは、おいしくないし」



 しどろもどろにいう。

 動揺する私を見て、光くんはかすかに笑って、つづけた。



「ずっといいたかったこと、いってもいい? 今なら、いえる気がする」




 ど・・・どうしよう。

 なんだか・・・逃げ出したい気がする。

 この雰囲気が、心臓を壊してしまいそうで・・・。だって心臓があり得ないほど、早鐘をうっている。


 顔をあげた光くんが、逃がさないとでもいうかのように、私の二の腕をつかんだ。

 

「おれは、ずっと、陽菜に言いたいことがあったんだ」



 熱を帯びて、うるんだ目がまっすぐに私を射抜く。

 今日の光くんはたくさんの言葉をくれる。

 熱のせいで、心のかせがはずれているみたい。ためらいや、迷い、恥ずかしさ、いろいろなもの・・・。

 たぶん、光くんはこれから・・・もしかして、私が言ってほしかった言葉をいってくれるのかな・・・。

 でも・・・。

 私はきゅっと手を握り締めた。

 光くんが、息を吸って、それから、思い切ったように言葉をつづけた。



「おれはずっと、陽菜のことが---!?」



 
< 58 / 156 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop