大嫌いだから、ね? ③
「だめ!」



 どうしてだろう?

 そう叫ぶとともに、私は両手で光くんの口を押さえてた。



「なんで、陽菜?」



 押さえた手に光くんの息がかかる。

 くすぐったいけど、手をどけない。

 だって・・・私が反射的にこうした理由はわかってる。

 わけがわからずに唖然としている光くんを見上げた。



「今は言わないで。もっと・・・普通のいつもの光くんの時にいって」

「普通?」


 
 わがままかもしれない。ずっと欲しかった言葉かもしれないのに。

 それに、光くんが言おうとした言葉はまるで別の言葉で、私のただの勘違いでうぬぼれかもしれない・・・。

 でも・・・でも・・・いつもの光くんのときに言ってほしい。

 熱のある光くんは、饒舌でいつもの彼とは違うように感じてしまう。

 それに・・・もしもしも・・・熱があるせいでいってくれて・・・熱が下がったら、忘れられてたりしたら・・・いやだから。

 そんなことないっておもうけど・・・それでも・・・。


 
「今はいわないで」



 私は言い訳するように、繰り返して言う。



「なんだか、今日の光くん、普通じゃないみたい。

 いつもいわないこといっぱいいっちゃうし・・・、その、なんだか、変だよ、違う人みたい。

 熱があるからだと思う、だから、いっぱい、なんでもかんでもしゃべっちゃってるんじゃないのかな。

 うん、きっと、熱のせいだよ。

 だから、熱がさがって・・・えっと、いつもの光くんの状態の時に、言いたいことがあるんだったら、聞かせてもらうね」



 動揺して、言わなくてもいいようなわけのわからないことを言い募っているっていうことに気が付いていない私---一気に言い放って、光くんを見たら、彼の目がいつものように・・・いや、いつも以上にきつくなっていることに気づいた。



 怖い・・・。もしかしなくても、怒ってる?

 



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