大嫌いだから、ね? ③
 そんな私を見て満足げにうなずいて、光くんは口を開いた。



「おれは、ずっと、陽菜のことが」



 が---光くんは、急に言葉を切って、ばっと私の身体をはなした。

 まなじりをつりあげて、私には背後にあたる、リビングの扉を睨みつけた。

 私も、思わず、振り返った。



「あ・・・」



 すっかり・・・忘れてた。



 リビングの開け放たれた扉の前に、ケーキの箱で顔を隠しつつ、たっている佐藤くんがいた。



 そうだった・・・携帯で話したとき、あとで、くるっていっていたんだ。

 すっかり忘れていて、光くんに言うのも、忘れてた。


 誰に言うともなく、それでも、弁解するように、佐藤くんが言う。



「いや・・・その、玄関、入ってきていいよってばかりに、全開してたし・・・。

 なんだか、おいしそうなにおいがただよってきてるし・・・。

 話し声なんてしたりするし・・・。

 ついでに、海老原の大好きな駅ビルのケーキなんて、買ってきたりしているし・・・一緒にお茶するにもばっちりだし、おれも仲間に入れてもらおうかななんて・・・。

 もう一つ言えば、リビングの扉も空いてたし」

「もういい」



 断ち切るように、しかし、おもいっきり不機嫌に光くんが佐藤くんの言葉を遮った。

  



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