大嫌いだから、ね? ③
 
 ---それから、光くんは・・・



「・・・なんか、急速に気分が悪くなってきた。

 食べたら、ねる・・・」 

  

 と、呟いて、引いたままだった椅子に座って、私が作ったご飯をあっという間に食べて、薬を飲んで、そのまま、自室に向って歩き出した。



 後ろ姿に、妙に脱力感が漂っているというか、哀愁が漂っているというか・・・。



 食べてから、部屋に向かうまで十分もかかっていない。早い。

 自室のドアを閉める前に、振り返って、佐藤くんに命令するような、怖い口調で言った。

 鋭い目つきが、怖い。



「飯をくうまえに、陽菜を送って行け、佐藤。くれぐれも紳士的にな。送りオオカミなんてしないように! ・・・したら、全力であの世に送る。

 それから戻ってきて、飯。食器は片付けて、食器洗い乾燥機にいれればいい。

 ・・・あと、ケーキ、サンキュ。大王プリンはおれのだから、あとはすきにして。

 ・・・そうそう、言い忘れたけど、陽菜が作ったご飯はおれが、全部、あとで食べるから、おまえは、あれ」



 指さしていたのは、レトルトのおかゆだ。

 

「梅でも、卵でも、なんなら、両方、いいぞ」

「ひどいっ。おれも、福田さんの手料理食べたいっ」

「うるせ! おまえなんて、馬に蹴られてしまえ!」

「う、ま!? うまなんていないし。って、ことわざっすか!? 海老原、文系ダメなのに、知ってたんだ」



 馬に蹴られてって・・・。

 人の恋路を邪魔する者は馬に蹴られて死んでしまえっていう、ことわざのことだよね。



 二人の会話が面白くて、つい、くすって笑ってしまった。

 


 

 

  
< 65 / 156 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop