大嫌いだから、ね? ③
そばには乗ってきた自転車が無造作に転がっている。
汗なのか、雨でぬれたのか、髪が額にはりついていた。
切れ長で鋭い目は、さらにきつくなって、周囲を睨みつけていた。
「え、海老原」
皆、突然の光くんの登場に、唖然としている。
私もそう。
びっくりしすぎたのと、安堵で、光くんに腕をつかまれたまま、固まってしまった。
「やっぱり、こんなことになってるんじゃないかと思った。
油断もすきもないってのは、ほんとだな。許可なく、陽菜に近づいてんじゃねぇよ!
もっとも、申請されたって許可なんて絶対やらないけどな!」
一息に言い切った光くんの、息は上気して、少し、顔が赤い気がする。
それに、つかまれた腕に触れている光くんが、とても、熱いような気がした。
「おまえ! いきなり、現れてなんだよ、その独占欲丸出しの台詞は!」
光くんにむかって、一人が言い返した。
明るい茶色い髪の、さっき、私の香りを、顔を寄せて、かいだ人だ。