大嫌いだから、ね? ③
5
翌日は、梅雨の晴れ間というような快晴で、青い空と大きな白い雲が見えた。
優しく頬をなでる風が気持ちいい。
駅までの道をいつも通り歩く。
公園の入口には光くんは、いない。
でも、昨日までみたいに不安にならない。
朝、光くんから、短いメールがあって、今日も学校休むと連絡があったから。
携帯って便利だと、改めて感じた。
見えない糸で、しっかりとつないでくれる。言葉を送ってくれる。つながりを教えてくれるんだ。
だから、不安にはならない。
駅について、ホームで電車を待っていると、声をかけられた。
振り向くと、そこにはいつもと同じに優しい笑顔をした長岡くんがいた。
「おはよう、陽菜さん」
「おはよう、長岡くん。初めてだね、行きの電車で会うの」
帰りは、私も長岡くんも同じ生徒会役員をしているということもあって、同じ電車で帰ることも多いんだけど、朝に会うのは初めてだ。
「うん、今日は、いつもよりはやく駅にたどりついちゃって」
「あ、そうなんだ。でもあるよね。朝の時間って、電車の本数多いし」
「うん、まあね」
その時、電車到着のアナウンスが流れた。
出入り口が止まる付近に人が密集する。中学生のころから電車通学だけど・・・この混雑にはいつまでたっても、なれることができない。
「きゃ」
「あぶないよ、陽菜さん」
急いでいる人に肩を押されてよろめく。
そんな私の二の腕を、長岡くんがひいて、人波からかばってくれる。
勢いで、一瞬、長岡くんの上半身に、身体ごとぶつかってしまって、一瞬、どきんとした。
いつも、優しい印象の長岡くんの手はやっぱり、大きくて、今更だけど、男の人なんだって気がつかされた。