大嫌いだから、ね? ③
 
 翌日は、梅雨の晴れ間というような快晴で、青い空と大きな白い雲が見えた。

 優しく頬をなでる風が気持ちいい。

 駅までの道をいつも通り歩く。

 公園の入口には光くんは、いない。

 でも、昨日までみたいに不安にならない。



 朝、光くんから、短いメールがあって、今日も学校休むと連絡があったから。

 携帯って便利だと、改めて感じた。

 見えない糸で、しっかりとつないでくれる。言葉を送ってくれる。つながりを教えてくれるんだ。

 だから、不安にはならない。



 駅について、ホームで電車を待っていると、声をかけられた。

 振り向くと、そこにはいつもと同じに優しい笑顔をした長岡くんがいた。



「おはよう、陽菜さん」

「おはよう、長岡くん。初めてだね、行きの電車で会うの」



 帰りは、私も長岡くんも同じ生徒会役員をしているということもあって、同じ電車で帰ることも多いんだけど、朝に会うのは初めてだ。



「うん、今日は、いつもよりはやく駅にたどりついちゃって」

「あ、そうなんだ。でもあるよね。朝の時間って、電車の本数多いし」

「うん、まあね」



 その時、電車到着のアナウンスが流れた。

 出入り口が止まる付近に人が密集する。中学生のころから電車通学だけど・・・この混雑にはいつまでたっても、なれることができない。



「きゃ」

「あぶないよ、陽菜さん」



 急いでいる人に肩を押されてよろめく。

 そんな私の二の腕を、長岡くんがひいて、人波からかばってくれる。

 勢いで、一瞬、長岡くんの上半身に、身体ごとぶつかってしまって、一瞬、どきんとした。

 いつも、優しい印象の長岡くんの手はやっぱり、大きくて、今更だけど、男の人なんだって気がつかされた。

 




 
 


 
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