大嫌いだから、ね? ③
「こんなとこで、こくってるんじゃないよ、斉木」

「ぐ、はなせ、こら、佐藤」



 もがく斉木くん。しっかりと抑えつけている佐藤くん。

 顔だけ私の方にむけて、佐藤くんがいった。



「福田さん、はやくいって!

 かなわぬ恋に狂ったあほをつかまえて、姫の退路を確保するのもナイトの役目ですから」

「だれが、あほだ、こらぁ! わけのわからんこといってないで、はなせ!」

「いやだね」



 きっぱりと言い切った佐藤くん。涼しげな顔で、斉木くんを捕まえている。

 なにか、武道でもやっていたのかな? 隙がない。

 くいっと、私の二の腕を長岡くんが引っ張った。



「いこう、陽菜さん。佐藤なら平気だし」

「で、で、でも」



 当事者の私がここからいなくなってもいいの?



「いいから。それとも、公衆の面前で、斉木に告白されたい?」



 ぶんぶんっと激しく私は首を振った。




「じゃあ、行こう」



 長岡くんに手をひかれながら、それでも、後ろ髪を引かれる気持ちで、振り向きながら、言わずにはいられなかった。



「ご、ごめんなさい、斉木くん。ごめんなさいっ!」


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