大嫌いだから、ね? ③
切れ長の瞳がまっすぐに私を見据えていた。
長い髪は緩くウェーブがかかっていて、無造作に背中に流している。すこし茶色で、さわったらとても柔らかそうだった。
赤く、薄い唇がはっきりと私の名前をよんだ。
「福田陽菜、さんよね?」
「はい、そうです、けど?」
訝しみながらも、私は答えた。
かわいらしい顔して、元来、気が強い理佳が口をはさんだ。
机に手のひらをついて、下から彼女を見上げながらいう。
「ねぇ、あなた? 人の名前をフルネームで呼ぶ前に、自分の方から自己紹介すべきじゃないの?」
「あなたは、黙っていてくれる?」
ぴしりと、彼女がいった。
理佳の形の良い眉がいっきにつりあがった。
「黙ってろ、ですって!?」
理佳の頬がひきつっている。言葉もふるえて、丁寧になっている。
理佳は、怒りだすとだんだんと言葉が、丁寧に丁寧になるんだ・・・そして、しまいには、手がでる。
案の定、机についていたてのひらは、気がつくと、拳を握っていた。
このままじゃ、まずいかも。
用事があるのは、私のようだし、理佳との乱闘開始なんて、はじめさせちゃいけない。
「えっと、あのね!」
私は立ち上がって、理佳と、彼女の間にはいった。