お仕置きしてやろうか?~ご主人様は俺様王子~
「もう明日アメリカなんて信じられないんだけど」
冗談っぽく笑う桐生を見てあたしもつられて笑う。
意外と普通に話せるんだな。
「俺がいないからって寂しくて泣くなよ」
「…泣かないしっ!!」
「嘘つき」
「嘘じゃない」
他愛ない言葉のやりとりでさえ胸がいっぱいになりそうになる。
あたしはどうやってもこの人のことが好きなんだ…
手を伸ばせば届く距離にいる今を離したくないって思ってしまうの。
「ほんと馬鹿だなあ」と笑っている桐生の顔が涙でぼやけて見える。
だめだよこんな…
今は一秒でも長く、貴方を見ていたいのに。
この心を貴方の笑顔と幸せでいっぱいにして、笑って送り出してあげたいのに。
「…ったく、そんな顔してんじゃねえよ」
かすれた声とともに桐生の香水の香りが一瞬で心を支配した。