大人の世界
3
「行こう!」
ゆきみが言った
「うん・・・」
ゆきみと二人、電車に乗った・・・
ガタン、ゴトン・・・
こんなに、あっけなく・・・
ガタン、ゴトン・・・
終わった・・・
こんなに、あっけなく・・・
ガタン、ゴトン・・・
「キュウキ」が去った――――――
まるで、昨日のことが、ウソだったみたい に・・・
現実に帰る・・・
暗闇のトンネルを抜け、キラキラした夜の 世界へ・・・
『KABUKI』という、不思議な異空間へ・・・
「キュウキ」という名の・・・
忘れられない存在の、人・・・
そんな、
つい、昨日の出来事が、
まるで、夢の出来事だったかのように・・・
あっけなく・・・、終わる・・・
現実に、引き戻される・・・
電車に揺られ・・・
あの、大きな背中を、思い出した・・・
「・・・・・ゆきみ?」
「うん?」
「キュウキさんて、どう思う?」
「どうって別に、なんも思わんけど?・・・」
「なんで?」
「ううん、別に・・・」
「どしたん?好きんなったん?」
「・・・・・・・」
「わからん・・・」
「なんかあった?」
思わずゆきみの顔を見た
ゆきみは、含み笑いをした
「なあんもないよ!」
「・・・・・・・!」
「もしかして!・・・・・・知っとるん?!」
「なにを?なあんも知らんよ」
そういうと、含み笑いのまま、 プイッと、あっちを向いた
「でもゆか、彼氏おるんやし、ダメやよ~」
「分かっとるよ、そんなんじゃないし」
ガタン、ゴトン・・・・・
もしかして、 あの時・・・・・
ガタン、ゴトン・・・
わざと、寝返りうった?―――――
ガタン、ゴトン・・・・・
何故か、それは聞けなかった・・・
夕日に赤く染まった電車が・・・
優しく二人を照らして・・・
「おかえり」って、
言ってるみたいだった・・・
さよなら、「キュウキ」さん・・・
さよなら、一夜の夢の世界―――――
ガタン、ゴトン、
ガタン、ゴトン・・・・・・・・