大人の世界
5
小松を過ぎ、松任を過ぎ・・・
野々市にさしかかった・・・
私はふと、その日・・・ 無性に「キュウキ」を思い出した
野々市に来た時、何故か、無性に・・・
「ねえ!」
私が、言った
「何?!びっくりした」
「ちょっと野々市寄って!」
「なんで野々市ねん?何があれん?」
「ちょっと・・・、キュウキんち行きたい!」
「キュウキ?・・・」 「キュウキって、あのキュウキ?KABUKIの ?」
「そう!」
「なんでまた、いきなりキュウキねん?」
ゆきみが笑った
「わからん、なんとなく・・・」 「なんか知らんけど、すっごい思い出した! すっごい行ってみたい!・・・」
そういうと、運転手の男は、 すんなり、 「いいよ~」と、
車を、野々市に走らせた・・・
だんだん、思い出してくる・・・
だんだん、あの日の景色が・・・
あの日と同じ街が、見えてきた・・・
近づいては、間違えて
一年半も前の、たった一度しか行ったことのない所・・・
「違う・・・、こんな所じゃなかったような・・・」
何回も、ぐるぐる車で回ってみた
あ!!!
ゆきみと、食べ物を買った店!
「そう!ここ!」
「ここまっすぐ行って!」
ドキドキドキドキ・・・
まっすぐ行くと、
あの線路が見えてきた!
あの、小さな路面電車の線路・・・
それを渡るとすぐ、
あの古い公園が見えた・・・!
気持ちがよみがえる・・・!
あの日の、あの時の、
自分に戻っていく・・・!
公園を左に曲がると、
見えてきた・・・!
あのアパート!
向かいには、あの駐車場!
「キュウキ」さんの、アパートだ・・・!
胸の奥が、懐かしさで、ジーンとなった
「よく覚えとったな」
ゆきみが言った
何故かあの日、目に焼きつけたこの道・・・
なんでかな・・・
「ちょっと行ってくるし、待っとって!」
そうゆうと私は、
あの階段を上った・・・
一歩一歩、踏みしめるように・・・
コツコツ、コツコツ・・・
ハイヒールの音が響く・・・
あの懐かしい、キュウキの部屋の前・・・
ピンポーン・・・
チャイムを鳴らした
ガチャ
(!!)
「はい・・・」
(キュウキさんだ!!)
そこには、「キュウキ」が、立っていた!・・・
「・・・え?、誰?・・・」
「・・・ゆか、ちゃん?・・・」