大人の世界
豹変

1




「ひ さしぶり・・・」




「あ!・・・ひさしぶり!・・・」 「ゆかちゃん、・・・だよね?」






「そうや~」


「え~!どしたん・・・?」

「・・・え~!ちょっと、びっくりしたわあ!」





「フフフ。ねぇ~!びっくりしたよね」

「元気やった?キュウキさん・・・」


「うん、元気やったよぉ・・・」





ドア越しに、 あの日と同じ「キュウキ」がいた 「キュウキ」は、ほんとにびっくりした表情 で、突っ立ってた・・・






「あ、上がる?」

「うん、上がる」





靴を脱ぎ、 部屋に入る 前と同じように・・・、 台所を通って、奥にはいる

居間がある

もう、こたつでは、なかった そこには、テーブルがあった

季節は、変わってた・・・




「なつかしい・・・」

私が言った 辺りを少し、見渡した

あの日と同じ時計・・・ あの日と同じカーテン・・・ 同じ、部屋・・・



「なつかしいよね・・・」 「何年振りやろう?・・・」

「何年も経ってないよ。一年・・・半、くらい ?」


「そうだっけ?・・・」





「うん」

「・・・・・」




キュウキが黙って、じっと私を見てた


「座っていい?」 私が、言った

「ああ、いいよ!・・・どうぞ座って」




私は前と同じく、正面に座った テーブルの・・・

「キュウキ」は、また、 左側に、座った・・・

しばらく、見つめあった・・・



だけどもう・・・

私は、照れたりなんかしない あの日みたいにうつむかない・・・

まっすぐ、「キュウキ」を見据える 自分がいた




「どしたん?キュウキさん・・・じっと見て」


「いや、別に・・・、なんかすごく、変わったなあって!・・・」





「そぉかな?・・・まあ、化粧しとるしね」


「そうやなぁ・・・あん時、素っぴんやったも んな」





「うん」

「・・・・・・・」



「あ、・・・なんで今日、突然来たん?」


あの日の「キュウキ」と違って、 なんだか落ち着かない様子・・・




「会いたくなったし」

「え?!」



「なんか、野々市の看板見たら、急に思い出 して、キュウキさんのこと」

「だから、無性に会いたくなったし来た」





「ダメ?」


「いいや、ダメじゃないよ・・・急にびっくり で」


「そうやね・・・急やよね、確かに」


「じゃあ、嬉しい?」





「え?!・・・えぇ、嬉しいよ・・・」

「あはは!ウソつかんでもいいよ、嬉しいわ けないし!」


私はそう言って笑った







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