大人の世界
高揚



「ダメ?・・・」






―――逢うと、ダメだ・・・

顔を見ると、ダメだ・・・



こんな短い時間じゃ、やだ・・・

このままバイバイ、したくない・・・

気持ちが一気に、 一年半を飛び越えて・・・、

「あの日」に帰ってしまった・・・



こんなふうに、思うなんて・・・





私は、少しドキドキしながら、 「キュウキ」の答えを待った・・・

「キュウキ」は、



「いいよ・・・、おいで」

優しく言った・・・



私は嬉しくて、子供みたいに、笑った

「じゃあ、終わったらベル、鳴らすね」




「キュウキ」と、ポケベルの番号を交換した

「うん、わかった」


「・・・じゃあね、後でね」

「うん・・・、あとで」




そういうと私は、足早に階段を降りた

少し、振り返ると、もう一度「キュウキ」と バイバイをした

それを見ると、「キュウキ」は、ニコッと笑 い、部屋に入って行った

こんな気持ちは、何年振りだろう・・・!

ワクワクする気持ちを押さえられなくて、 私はニヤケる顔を両手で押さえ、車に戻っ た




「ごめん!遅くなって!」

「もぉ~!おっそいよ~!どんだけ待たすん ?!」



「ごめん、ごめん!マジごめん!!」

「ほんとにもぅ~、何やっとってん?!」

ゆきみは、ちょっと怒ってるみたい・・・


「ごめんね、埋め合わせはするし!ごめん、 ごめん!」

私はとにかく謝った



だけどそれよりも、嬉しさのほうが強くて ニヤケそう・・・!




「・・・なあに?なんかあったやろ?」

ゆきみが聞く

するどい・・・・・。



「うん」

「またチューとかしたん!?」


「またってどうゆうこと?!しとらんわいや !」

「じゃ、なに?」



「・・・あのさ、遊ぶの終わったら、あたしキ ュウキさんち置いて行って」

「まじか!!」

「うん」


「なんで?!また好きんなったん?!」

「うん、そう!」



「はあ~・・・」

「よーやるわ。」



ゆきみは、またかと言った表情でこっちを 見た

私は、そんなことお構い無く、 それ以上に、嬉しさのが強かった・・・




「ごめん!先生、遅かったよね!さ、行こ! 」

先生とは、運転手の男のこと

高校の時から、ゆきみとあたしとで、 この先生に、遊びに連れて行ってもらって る仲


高校教師が、生徒に言われるがまま、行く 先々に連行する・・・なんて、 ちょっとおかしな話し



だけど実際、先生は、 夜遊びに付き合い、行きたい所へアシにな り、私ら二人の言いなりだった


そもそもが・・・、 そこからして間違ってるよね・・・

世の中、何が正しいのか・・・ 麻痺してる状態





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