大人の世界
密告


『KABUKI』を出てから、4人で 街を歩きながら次の店に向かった

私は、もう黒服じゃない「キュウキ」に さっきまでは感じなかった親近感が湧いた

急に、4つの歳の差に違和感がなくなった 気がした

その背中を見ながら、歩いた


「なんや、もう5時回っとるんや」

「アツシ」が言った




そういえば、もううっすらと辺りは明るく

賑わってた街も、 あのキラキラしてたネオンも、

どこか静寂を取り戻してきてた


それでも、何人か、 細くて、高いヒールを履き、髪の長い綺麗 な女の人達が、ビルの前で喋ってる

大声で笑い、一緒にいる男性に、 たまに抱きついたりしてる

そんな光景、見たことない―――


まだ、あちらこちらで スーツを着た、サラリーマンのような男性 や

『KABUKI』にいたような、黒服を着た男の 人・・・

そんな人達がたくさんいる・・・


―――私が知らなかった時間にも 街は生きているー

そんな衝撃が、 私をいっぱいにしてた




「どこも空いとらんな」

「アツシ」が言った

さっきから、「アツシ」の行きつけらしい店 を、何軒か回ったけど

やっぱりこの時間には、閉まってるようだ った

「どうすっか・・・」

「そうっすねぇ・・・」



しばらく、4人で考えた 間もなく「アツシ」が、

「ホテル泊まろう!」


ええーーーーーー!!!

(まじかよ)



そう思ったが、 咄嗟にゆきみが、

「そうしよ!ゆきみ眠いわあ、もう疲れたわ!みんなで寝よ~♪」

・・・・・えぇ~、・・・。

「いいっすね」

「キュウキ」がさらりと言った。



当たり前の如く、なに食わぬ調子で言う「キ ュウキ」に見とれて

また、なんでもないような、すました顔を してるゆきみにも、

私だけ取り残されたような気がして・・

(これは別に驚くほどのことではない?・・・)

そう思うと、

だんだん

(いいのかな?・・・)

って、思ってきちゃった・・・



私がそう思ってるうちにも、 どんどん3人は、ホテルのあるほうへ歩い て行った

私も早足でついていく

「アツシ」がフロントで、 なんか話している

「いっぱいやって」

そう言って戻ってきた

「どうする?・・・」



「キュウキの家行こう!」

考える間もなく、「アツシ」は言った

「いいですよ」


「キュウキ」が

すぐ、そう答えた






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