大人の世界

4

「・・・もしかして、バイトやった?」

「うん・・・」


「ごめんね、バイトやったのに・・・」

「いいよ。」


口数が、少なく・・・、

疲れてるみたい


それでも、

「キュウキ」は、私を抱いてきた・・・




もう・・・、

あの時みたいに、感じなくなっていた・・・

あんなに感じた、キスも・・・、

唇から、何も伝わって来ない・・・


冷たさだけ、残る

「熱」が、伝わってこない・・・



さっさと、情事を済ませ、

「疲れたから」、といって、眠る・・・





その背中を見て・・・、

思ったんだ・・・




もう、会うのは止めよう・・・

今日限りに、しよう・・・

そう、決めたんだ・・・





寝不足になっても・・・、

たとえ、一睡もしないで、仕事に行ったと しても、

別にそれでよかった・・・

この、「背中」を見るほうが、

よほど、辛い・・・


そう、思った・・・





私は、眠る「キュウキ」に、気づかれないよ う、

服を着て、

ベッドを、降りた・・・






――サヨナラ、キュウキさん――


しばらく、その背中を見つめて、

そっと、キスをした―――






その後、

「キュウキ」からは、なんの連絡もないまま 、

月日が過ぎた・・・




私は、

「キュウキ」を、一日も、忘れたことなどな く、

毎日、毎日が、

中途半端に、置き去りになったままの心の 傷みだけ、

増えてくばかりだった・・・




季節はもう、冬になり・・・

あの日から、3か月余りたとうとしてた・・・







すっかり寒くなり・・・

もうすぐ、

クリスマスがやってくる・・・


そんな時・・・、

私のベルがなった


「キュウキ」からだった


語呂合わせの数字ではなく、

「キュウキ」の電話番号だった・・・

少し、戸惑った




手放しでは、喜べない、自分がいた

あんなに、毎日、毎日・・・

思ってた「キュウキ」さんなのに・・・

確かに、喜びもあったけど・・・

それにブレーキをかけてた


もう、辛い思いはしたくない・・・

そんな思いが、自分を臆病にさせてたのか も知れない・・・




少しして、

受話器をとった・・・

コール音がして、間もなく、

「キュウキ」がでた




「ゆかちゃん?・・・久しぶり」


「・・・久しぶり」




「元気だった?」




「・・・・・・・・・・・・・」

「どうしたの?・・・突然」




「あぁ、ごめん」

「今まで連絡せんくて・・・」


「大事な話があるから・・・」

「会いたい」






―――会いたい・・・


そう言われて、

私の心は揺れ動いた・・・






「イヴの夜、空いてない?・・・」













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