大人の世界
再燃




――イヴの夜?――・・・




「ゆかちゃん?・・・」


「・・・あ、」






「空いてないかな?」






「・・・・・・・・」 「うん・・・」


「空いてないよ」








――空いてないよ――



なんで、咄嗟に

こう言ったのか・・・・






「・・・そうか・・・、わかった・・・」

自分でも分からない



空いてない、なんてウソ・・・

「・・・じゃあ、また、かけるよ」

「・・・分かった」




「じゃあ、」

「・・・じゃあ、ね。」





受話器を置いた後、

冷静な自分がいた・・・


この「ウソ」が、

ただの強がりだった、って・・・

ほんとに分かったのは、

もっともっと、後になってから・・・


私は、

見て見ぬ振りをして、 毎日を過ごした


自分の、気持ちに・・・

ほんとは止まらない、 「キュウキ」への、熱い思いに、

無理やり蓋をして、

現実から逃げていた・・・


傷ついて、その痛みが怖いから、

避けていただけだった・・・


それも、これも・・・

大切なことはいつも、

ずっと、後になってから、気付くことが多 い・・・






仕事で紛らわし、遊びで紛らわし、

溢れ出てくる気持ちに蓋をして、

誤魔化しながら毎日を過ごした・・・


カレンダーが、

だんだん、クリスマス・イブに、

近づいてくる・・・


街角には、すっかりクリスマスムードが漂 ってた・・・









< 34 / 44 >

この作品をシェア

pagetop