大人の世界

4

「ちょっと前に辞めたよ」



「・・・そう、ですか・・・・」

バタン――――





「あ、あの!ちょっと!」

私は、その声も聞かず、項垂れて、ドアを 閉めた・・・


エルビルを下りると

ジングルベルのメロディーが、聞こえてき た・・・・


行き交う人達の、笑い声が聞こえてきた・・・ ・



そうだ・・・

クリスマス・イヴだった・・・

ふと、見上げると、街は

クリスマスイルミネーションで、

街中が、キラキラ輝いていて


どこを見ても、どこを見ても

宝石箱のような、綺麗な夜だった・・・



アハハハ!―――

誰もが楽しそうで、

恋人達の寄り添う姿が、ひときわ輝いて見えた・・・



そんな、街の風景に

今頃やっと、気づいた・・・



宝石箱の街を、

ただ一人、歩いた・・・


どこにも、「キュウキ」さんがいない

私には、ただ、

巨大迷路に思えた街・・・




雪が、降ってきた・・・

見上げると、真っ暗な空から、

少しずつ

粉雪が、降りてきた・・・


この空のどこかに、

「キュウキ」さんがいる・・・


だけどもう、わからない

どこにいるのか、

わからない


もう、会えない人・・・



涙でぼやけて、

滲んだ街の、イルミネーションを見ながら歩いた・・・



私の、19歳の、クリスマス・イヴ・・・






それから、月日が流れ

一ヶ月ほどが過ぎた

私の苦しみは、更に重なっていった・・・

「キュウキ」の、ポケベルの番号も、変わってた


もう、なにひとつ、

手掛かりはなかった


忘れようにも、忘れられない

後悔だけが、残ったままだった・・・




ゆきみが、なぐさめる

「しゃあないやん」


「もう、過ぎたことやし・・・、あきらめよ」

「次いこ!次!また誰か探せばいいやん!」

「ゆか!パーッと遊びに行こ!」



「・・・うん」




「じゃ合コンしよ!合コン!」

「いい男集めたるさかいに、ね!」



「・・・うん」


「・・・・・・・」




「・・・あんた、よっぽど好きやってんね」


「・・・かな?」




「はあ・・・!ったく」

「どうすればいいんやろ、この子!」



「いいよ、ゆきみ・・・、ありがと」

「ほっといて・・・、自然になおるさかい・・・」


「自然になおるさかいって・・・!」

「ほっとけんやん!・・・」




その時だった

私の、ベルが鳴った

ピーピーピーピー、







「203***51」


――203号、来い――



え?!


ええ?!!―――








「あーーーーー!!!」

「なに?!」






「キュウキさん!!」

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