大人の世界
1
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――ゆかちゃんへ
この手紙が、ゆかちゃんの目に映るこ
とを信じて、書きます
僕は今、このアパートを出て
実家にいます。
家の諸事情や、自分自身の将来のこと、
色々あって、大学を辞めました
もうすぐ、
県外に行くつもりでいます
そこで、1から新しい生活をするつもりで す
ゆかちゃんと会ってた時は、
自分の中の、色々な問題で、いっぱいいっ ぱいで、
いつも、
家のこと、就職活動、大学、
そんなことばかり、気になってた・・・
そんな気がします
あの頃、
ちゃんと向き合ってやれなくて、
ごめんな・・・
ゆかちゃんの気持ちに、気づきながら、 見て見ぬふり、してた・・・
自分のことで、精一杯だった
会わなかった3ヶ月間、
冷静に考えることができたんだ・・・
そして、
もし、ゆかちゃんさえ良ければ
一緒に県外に、いかないか?・・・
それを言おうと、思ってたんだ
クリスマス・イヴに・・・
「!!!」
ハッ! 息を飲んだ・・・
「キュウキさん・・・」
涙で、文字が霞む・・・
だけど、
ゆかちゃんは、こんな俺の態度に
きっと嫌気がさしたんだろう、
あの電話の時、そう思った
だから、もう決めたんだ
一人で、行こうって・・・
だけど、
ゆかちゃんの口から、はっきり気持ちを聞 きたかったな、
最後に・・・
――その言葉が、胸に突き刺さった・・・
あの時、素直になっていれば
会って気持ちをぶつけていれば・・・
そのことばかり、繰り返す・・・
何も言わずに行くつもりだったけど、
こないだ、「Rアール」へ行ったら、
クリスマス・イヴに、
血相変えて走ってきて、キュウキさんいま すか?、って
訪ねて来た子がいたって、教えてもらった
いないと分かったら、涙目で帰ってったっ て・・・
すぐ、ゆかちゃんだと分かったよ・・・
イヴの日に、
俺を探してくれてたんだね・・・
だから、
最後に、伝えようと思った・・・
ちゃんと、今までの自分の気持ちを
ケジメとして・・・
会うと、
別れが辛くなりそうだから・・・
ごめんな・・・
今まで、ありがとうな
好きだったよ・・・
元気で・・・
――キュウキより
P・S:あの花火、綺麗だったな・・・
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「・・・キュウキさん!・・・」
私は、声を殺した・・・
「ウゥッ・・・!」