大人の世界
Last story
―――痛みは・・・、
時間が、解決するしかない・・・
――――バタン!
「気持ちいいねー!」
車を下りて、ゆきみが言った・・・
流れてゆく季節の中で、
その痛みが、薄れていくのを、待つしかない・・・
「ねー!気持ちいいね!最高やな!」
私も、車から下りた
寒い冬が終わり、
やがて春が来る・・・
「キュウキ」と過ごした、
あの夏がまた、やってくる・・・
人は、傷を負った分、
強くなれる・・・
私の苦しんだ、この数ヶ月は
決して、無駄じゃない・・・
また一歩、
大人の階段を上がった
ステップとなったはず・・・
「ゆか~!なんで金沢港なんか来たかってん?」
「ん?・・・、ちょっとね~!」
「急に見たくなって!」
「そっか!」
―――キュウキさん・・・、
今、どこにいますか?・・・
元気ですか?
金沢港はまた、
夏の賑わいを見せて、
海ねこが、沖で群がり、鳴いています・・・
あれから、少しずつ・・・
私も、元気を取り戻しました
そして、少しずつ・・・、
分かってきたような気がします・・・
あの日、
初めて、「キュウキ」さんに会った、あの日・・・
すごく、大人の男に見えました
だけど、
だけどキュウキさんもまた・・・、
大人になる途中の段階で、
もがき、苦しんでた・・・
そんな、
大人と子供の「中間」の、一人だったんじゃないかな・・・、
そんな気がします・・・
男の人生の、節目の時に、
きっと、私のことまで考える、
そんな余裕なんて、なかったんだよね・・・
そんなことも知らずに、
押しかけて、ごめんね・・・
今なら、わかる
ごめんね・・・
ありがとう・・・
―――それを伝えられたら、
どんなに、いいだろう・・・