イケメン殿様と平凡少女
「ふふっ、殿、
うちに来た時
汗だくだったんだって?」
「今のモエほどじゃないぞ」
「あたしは汗かいた分
やせるからいいんだよ!」
「なんだモエ、
やせたいのか?」
「当たり前!
トマトだって
美容にいいんだからね!
殿もまた見に来なよ」
ごく自然にあたしの口から
出た言葉。
それを聞いて殿は
フッと笑うと
くるりとあたしに
背中を向ける。
そして夜空を
見上げてこう言った。
「なあ、モエ。
今夜は満月だ」
「…?
そうだね…?」
「オレはもうモエとの
約束は破りたくない。
だから出来ない約束はしない」
「殿…?
何言って…」
「モエ…
さよならだ。
もう、会えない」