土の子と風の子
今まで土の子に対していじわるな言葉ばかり言っていたのに、土の子は、自分と一緒に嵐を抜けてくれると言うのです。
「・・・土の子、お前・・・。」
土の子は風の子の顔みると、うん、と頷きました。風の子は、黙って土の子の背中にしがみつきました。
そして土の子は再びふんばると、行く手をさえぎる嵐に向かって歩き出しました。
「ぬははは、おろか者めが。誰ひとりとて、ここを通すものか。そうれ!」
嵐の親分が体をめいいっぱい大きく広げ、凄まじい勢いの風で、土の子の体を吹き飛ばそうとしました。
「ぬうん!」
土の子は少し後ろに押し倒されそうになりましたが、大勢を整えると、前かがみになり、また、ゆっくり歩き始めました。
「ぬははは、なかなかやりよるわい。それじゃあ、これならどうだ。そうれ!」
嵐の親分は、今度は自分の体を丸ごと土の子に体当たりさせました。これはなかなか大そうなものです。
「ぬう・・・!ぐわあああああ!!!」
土の子はじき飛ばされそうになった体を自分の足で支えると、声を出し気合いを入れて、今度は今まで出したことの無いものすごいスピードで走り出しました。
どすんどすんどすんどすん!
辺りは土の子が走る度に、ぐわんぐわん揺れました。
「な・・・!なにぃ!これでもきかぬとは!きさまいったい・・・!行ってはならぬ!春が来たら、わしは・・・わしは消えてしまう!!」
今度は後ろから嵐の親分が追いかけてきましたが、それが追い風となり、土の子と風の子は一気に頂上の奥まで押し出されました。
「ぬあっ!しまったあああ!!!」


土の子と風の子が固い岩山を抜けると、そこには、日の光がよりいっそう降り注ぎ、辺りにさわやかな風が吹いている緑が萌える丘が広がっておりました。
ここまでくればもう安心です。
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