FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
玄関の方から勢いよく扉が開く音が響いた。

「今度は何っ……」
 
驚く暇も無く、風が舞い込んできた。吹き飛ばされるくらいの強風である。

「きゃあああっ!」
 
キッチンに置いてあった鍋やフライパン、調味料など、軽いものは風に飛ばされ、物凄い勢いで飛び交う。
 
頭を抱えて座り込む聖のすぐ隣で、ゴーン、ととても良い音が響いた。

「──そっ、蒼馬っ……」
 
その音は、蒼馬の顔面にフライパンが直撃した音だった。蒼馬はそのまま後ろに引っくり返る。

(こ、この風は……)

「すっ、すまんっ、これは私だっ……!」
 
物がぶつかる音に紛れて、真吏のそう叫ぶ声がした。

(やっぱり……)
 
風は〝増長天”の操ることの出来る力だ。しかし、蓮と同じくうまく制御することが出来ないらしい。──ついに、食器棚まで倒れた。



「──もおっ! いい加減にしてー!!!」

 

紅葉が叫ぶと、ピタ、と風は止んだ。飛び交っていたものがいきなり止まり、水と共に上から降ってきた。

ガコン、ゴツン、と固いものが頭を直撃。最後に冷たい水を浴びて全員の髪から水が滴った。
 
それが落ち着くと、辺りは静けさを取り戻した。

< 101 / 280 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop