FORTUNE~フォーチュンシリーズPAGE1
真夏のジリジリとした太陽の下、戦闘の演習は辛いものだったが、いつ、またあの少女──ファリアの生まれ変わりや、他の妖魔たちが攻めてくるとも限らない。
緑に囲まれた山の中には、気合の入った掛声と、凄まじい武具のぶつかり合いの音が絶えなかった。
何も存在しない真白な空間。
そこに佇む長い銀の髪の少女は、目の前で糸を紡ぐ大きな歯車にそっと触れた。
『同じ、未来……』
紡がれる糸は、来るべき未来を映し出す。
『やはり変わらぬのか……。私は……また、見ていることしか出来ぬのか……』
この〝運命の輪”を廻すのは他でもない、自分なのに。
この未来を変えることは出来ない。どんなに望んでも。
女神フォーチュンは歯車に爪を立て、強く目を閉じた。
どうすることも出来ない苛立ち。全てを知っていながら、手を差し伸べることすら許されない。
感情を忘れて──いや、忘れたと思い込もうとしてから、久しく感じていなかったものが、今は胸の中に激しく渦巻いていた。
運命を紡ぐ者は決して、感情を持ってはいけないというのに。
(それは罪なのでしょうか)
その問いに応える者はいない。〝もう”いない。遥か昔に消え去った。
『罪……なのでしょうね』
解っている。
解ってはいるが、望まずにはいられない。
長い間、同じ運命を辿ってきた彼らに。
どうか。
次こそは、幸せに、と。
『もう、貴方たちの涙は、見たくないのです……』
この願いはどこへ行くのか。
どこでもいい。この願いが叶うなら。
誰でもいい。この願いを叶えてくれるのなら。
それが、たとえこの身を滅ぼそうとも……。
緑に囲まれた山の中には、気合の入った掛声と、凄まじい武具のぶつかり合いの音が絶えなかった。
何も存在しない真白な空間。
そこに佇む長い銀の髪の少女は、目の前で糸を紡ぐ大きな歯車にそっと触れた。
『同じ、未来……』
紡がれる糸は、来るべき未来を映し出す。
『やはり変わらぬのか……。私は……また、見ていることしか出来ぬのか……』
この〝運命の輪”を廻すのは他でもない、自分なのに。
この未来を変えることは出来ない。どんなに望んでも。
女神フォーチュンは歯車に爪を立て、強く目を閉じた。
どうすることも出来ない苛立ち。全てを知っていながら、手を差し伸べることすら許されない。
感情を忘れて──いや、忘れたと思い込もうとしてから、久しく感じていなかったものが、今は胸の中に激しく渦巻いていた。
運命を紡ぐ者は決して、感情を持ってはいけないというのに。
(それは罪なのでしょうか)
その問いに応える者はいない。〝もう”いない。遥か昔に消え去った。
『罪……なのでしょうね』
解っている。
解ってはいるが、望まずにはいられない。
長い間、同じ運命を辿ってきた彼らに。
どうか。
次こそは、幸せに、と。
『もう、貴方たちの涙は、見たくないのです……』
この願いはどこへ行くのか。
どこでもいい。この願いが叶うなら。
誰でもいい。この願いを叶えてくれるのなら。
それが、たとえこの身を滅ぼそうとも……。